■エンタープライズにおけるOSS利用のポイント
(株)オージス総研 細谷竜一
上図:某公益企業グループのIT基盤におけるOSS導入の経緯
※ThemiStruct(テミストラクト)はオージス総研におけるOSSベースのIT基盤製品のブランド名です。
オージス総研では、2007年以降、某公益企業グループで利用するIT基盤における商用製品のOSSでの置き換えを積極的に支援してきました。上図は具体的にIT基盤のどの部分をどういうOSSで置き換えていったかを示しています。
この図からわかるように、OSSでの置き換え範囲はIT基盤の広い範囲に及んでいます。ここまで積極的にOSS利用を進めた理由は、増大する一方であったITコストを最適化する上でそれが有効だと考えられたからです。
より具体的には、OSSへの置き換えによってユーザ数とライセンス料の分離ができる点が重要です。商用製品では、ユーザ数ベースの価格体系になっているものも多く、この場合、ユーザ数が増えれば支出もダイレクトに増えていきます。一方、OSSは自力で使いこなすならライセンス料は無料であることは当然ですが、たとえサポート付きの商用OSS製品であってもCPUコア数ベースなどユーザ数に比例しない価格体系になっている場合が多いです。そのため、OSSベースで構築した情報システムのTCO(total cost of ownership)は予見しやすく、IT予算を組みやすいという性質があります。
OSSとコストの関係については上述の通りですが、信頼性についてはどうでしょうか?企業がOSSを利用する上で問題となるのは、それに関するサポートをどこから得るか、という問題です。
もしユーザとなる企業側で自力でOSSを使いこなそうとすると、そのための技術者を育成あるいは雇用し、OSSのソースコードを読み、バグが見つかればパッチを作成し、また、開発コミュニティの一員となるために成果をOSS開発プロジェクトに還元したり・・・といった取り組みが必要です。しかし利用しようとするすべてのOSSについてこのような取り組みをユーザ企業内で行うことは必ずしも現実的ではありません。
そこで、別の会社から有償のサポートを受けることになります。上述の導入事例では、オージス総研がサポートを提供することとし、ここにOSSの技術的ノウハウを蓄積していきました。また、OSSを、単に利用する一方でなく、OSS開発プロジェクトへの還元も行いながらコミュニティとの接点をオージス総研内に増やしていきました。
いくつかのキーとなるOSSについては、商用OSS製品を利用し、本番利用では商用ライセンスを買って根の深い問題は開発元からのサポートやパッチが得られるようにしています。
「有償サポートにおカネを使うのであれば、結局商用製品を使っているのとコスト的に変わらないのでは?」と思われる方もいるでしょうが、これは違います。OSSのサポートサービスは、ユーザ数に応じた料金ではない場合が多いですし、また下図のように、必要なフェーズに必要な程度だけのサポートサービスを購入できますから、コスト最適化が図りやすいのです。
他にも、OSSには、(商用製品にみられるような)古いバージョンの保守切れに伴う半ば強制的なバージョンアップ対応を回避できる、製品自体の開発がストップしてもソースコードが手元に残るためにメンテナンスしながら利用を継続することができる、といった特性があります。
このように、エンタープライズの長期的な発展を考慮したとき、それを支えるIT基盤におけるOSSの利用には様々なメリットがあると言うことができます。
以上
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上図:オージス総研 ThemiStruct(テミストラクト)ホームページより
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